菊池哲男の山岳写真の写し方: 山で出会う絶景を美しく記録する

菊池哲男の山岳写真の写し方: 山で出会う絶景を美しく記録するの詳細

大学時代に山に魅せられ山歩きを始めて５０年弱経った。その頃から、山行には必ずカメラを持参し記録を残すようにしている。カラーフィルムがまだ初期の頃(小西六がサクラカラーを販売してた)からだから、撮り貯めた数は膨大なものになる。だが、良い写真(自分が気に入った写真)となると驚くほど少ない。絵葉書や観光パンフレットのような写真はいくらかあるが、その時の感動が伝わってくるような写真がなかなか撮れないのだ。天泊の朝、朝日に輝く、南ア・大沢岳の稜線、笊が岳の尾根筋顔を出す富士の頂を見た時の喜び。文三郎新道の強烈な吹雪、ピッケルを握る指先刺すような寒さ、眼下に広がる雲海に囲まれた充足感。そういったその時々の感動を一つの絵として残したいと思っている。そんな視点で本書を見てみた。一般の風景写真と異なり、舞台が自然条件の厳しい山岳地域ということもあり、最初に登山に関する装備に関する記述に1/4近くの４０ページを割いている点は特筆できるだろう。内容は安直な初級登山ガイド本より詳しく実際的だ。次に山岳撮影機材と撮影テクニック、よく出くわすごーすととフレアーを抑える方法、日照方向による山体描写、構図などは特に参考になる。更に四季の山々、山特有の被写体、山岳夜景などの撮影技法を豊富な美しい作例とともに解説している。撮影テクニックを学ぶ本だが、山岳写真集としても楽しめる。期待以上の内容だった。